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モリシマに入って18年、深田社長自らが前線に立って存続への道を模索しながら突き進んできたが、途中、社員の反発もあった。7〜8年前(平成6〜7年頃)、なんとか会社が存続していけそうだと思って後ろをみたら誰も付いてきていないということがあったのだ。 絵画や毛皮を売ったり、郊外店に卸したりと無我夢中な時代を経て、異業種ルート販売にたどり着いたわけだが、その間、深田社長は社員とのコミュニケーションはほとんどとっておらず、社員の思いや気持ちを知る由もなかったのである。社員にしてみれば、社長が何を考えているのかわからず、また逆に社員の会社に対する夢や思いも伝えられず、ただ目先のことだけするしかない状況である。社員の不満や鬱屈はピークに達しつつあり、モリシマの内部は爆発寸前だった。 「要するに僕は裸の王様になっていたんですね。名古屋研究会の仲間が、お前は一生懸命やっているけど社員の夢とお前の考えていることが違うんじゃないかと言われましてね。一度根本からやり直したほうがいいという仲間もいて、社員全員の研修合宿で改めて意志疎通を図り、新たに意識統一しました」 そこでは驚くほど活発な意見交換があり、その中で出てきたのが『オーダースーツ10年保証』で、お客のために何ができるかということだったのである。「やる気塾」を拡大し、モリシマの柱としていくためには、従来からある既存の商売も変えていかなければならない。深田社長は「やる気塾」の考え方が理解できない取引先はすべて捨てていくことにした。大英断である。そして今、全社員が共通の意識で、新しい事業形態の確立という目標に向かって進んでいる。 「既存の商売を全部「やる気塾」の方向に変えているところです。そぐわないところは切り捨てて行くしかない。それをやっている最中です。経営的にも大きく変わろうとしているときなんです」とキッパリ断言した。その言葉の裏には社員と一体となって会社を盛り上げていこうとする信念と自信がかいま見えた。 深田社長は「モリシマの財産は人材と、我々を理解してくださる企業と取引先、リピートしてくださるお客様」と言う。
お客様のためになるかどうか、目的と手段を明確にしているか、明るく元気に素直でいるか。これはモリシマの"考動指針"<モリシマの考えて行動する、独自の理念>であり、人と商品とサービスのクオリティーを追求するという経営理念をもとに、深田社長の挑戦はこれからもまだまだ続く。今後モリシマは異業種販売をさらに確立し、今度はそれを核として更に新しい事業を興す必要があると深田社長は考えている。今は健康を軸に何かできないかと模索中だ。その一環としてまず血流が改善するスーツを開発、販売を始めた。そしてもうひとつの大きな流れとして、客を固定化していく中で、その都度イベント時に買いに来てもらうのではなく、たとえば月1,000円の会費制にして互助会のように顧客のサークル化を図る。その中で買い物クラブみたいなものを作っていけば、お互い収益になると考えている。「そして最終的には後継者を育成しながら、能力を最大限に出せる場を作り、社会的にも社内的にも世間から認められる企業になること。そのためには株式の公開を目指しています」 モリシマへ入った当時の負債は13億円。それが現在5億円にまで減った。深田社長のチャレンジ精神はとどまるところを知らず、黒字になるのもそう遠くはない未来だろう。
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