はじめに

蔦茂の興り

明治末年に蟹江町須成の深田家当主良矩は、各地の親類が銀行業を始めたことに影響されて、伊勢町で金融業を開始しました。
そして大正2年、八百屋町の蔦茂旅館を取得、住吉町でお客さんの接遇を目的とした割烹旅館を買収。
これが“蔦茂”の第1歩となったわけです。金融業が行き詰まりをみせる中、蔦茂旅館は妻の静江が女将を務め、順調に営業を続けていきました。顧客には三菱電機、王子製紙のトップなどの宿泊施設としても共用されています。
ところが昭和20年3月、名古屋大空襲によって全焼してしまったのです。

革新的な再スタート

昭和22年4月、良矩の子、正矩が住吉町の同じ場所に黒塀の数奇屋造り本館を新築しました。
正矩の妻のり子が女将を務め、これを“料理旅館蔦茂”として開業。
そして玄関ビルに日本座敷を設けるという、当時としては画期的な建築を試みました。
やがて料亭の役割が多くなり、昭和32年には料亭としての新しいビルが竣工。
屋上にゴルフ練習場を設けたことで、話題を集めました。

名古屋市登録地域建造物資産 第100号

■ 名古屋市登録地域建造物資産第100号に創業100周年の料亭蔦茂が認定

 

■ ARCHITECT 2016 Aug 日本建築家協会東海支部広報誌に料亭つたも・数寄屋造りが野口和樹氏より紹介されました。
最高のお料理、サービス、そして、建物・調度で日本文化のテーマパークとして、今後もお役に立てること楽しみにしております。

 

深田良矩(大正撮影)

深田家と蔦茂の歴史

16世紀半ば 深田家の祖先が大和郡山から岡崎へ移住
17世紀後半 深田一族、酒屋を開業 ※現在も岡崎市中町にて丸石醸造株式会社として営業。徳川家康、長譽(ちょうよ)のブランドで著名です
18世紀 三河の深田一族が蟹江町須成地区で新田開拓携わり、同地域で歴代庄屋を務める
明治21年 2月11日、須成の深田家の嫡男として深田良矩誕生
大正2年 八百屋町の蔦茂旅館を取得 住吉町にて旅館”蔦茂”を開業 創業100年の歴史の第一歩を踏み出す 女将、深田静江による細腕繁盛記経営で発展 ※詳しくは住吉の語り部「第12回 山田静江の細腕繁盛記と蔦茂再建」
昭和20年 3月、名古屋大空襲、蔦茂焼失
昭和22年 4月、良矩の子正矩が住吉町同地に新築開業 料理旅館として再出発
昭和26~27年 数寄屋造りの巨匠、岩城誠一郎設計による、鉄筋4階建て玄関ビル・2階建て純和風別館(現存)建築
昭和32年 広間のある新ビル完成
昭和61年 2代目女将のり子逝去
平成元年 旅館業から撤退、料亭専業となる
平成22年 4月、料亭つたも/ジェイアール名古屋タカシマヤ店オープン 9月、セントラルキッチン丸の内開設
平成25年 創業100年を迎える

大正2年創業「住吉の老舗料亭蔦茂」に紹介されております。

「愛知千年企業 大正時代編」北見昌朗著作、2016年2月中日新聞発行
大正2年創業「住吉の老舗料亭蔦茂」に紹介されております。
 
紹介ページはこちら

Intoroduction

Tsutamo has offered Japan’s vivid and rich cuisine for over a century in Nagoya City.
It is conveniently located in Sakae in a busy business and commercial area.
 
Even so, you can experience a quiet and relaxed dining atmosphere in the traditional Japanese style.
It is because Tsutamo is one of the most high-end, traditional restaurants and it is one of Nagoya’s historical asset buildings, with beautiful and quaint Japanese gardens.
 
Go there soon to enjoy their traditional building because they will be moving to a brand new building next summer.
http://tsutamo.com/english/
 
Written by Nami Nomura, Coordinator for The Institute of Samurai no Kokoro
http://samurai-no-kokoro.jp/index.htm

中日新聞に紹介されております。

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お庭

玄関より細い通路を進んでまがり角を曲がると、静と動の景観が広がっています。

目の前には風情のある岩が山を築き、石や草木が一層趣きのある風景に仕上げています。 その山からは水が滝のように流れ、水は川のように私達の下を流れていきます。

この景観は料亭の中央に位置し、左奥には2階建ての数寄屋造りの建物があります。客間としては4部屋利用できます。

右手には鉄筋・鉄骨5階建てビルがあり、客間5部屋があります。

数奇屋造りの建物は2013年名古屋市登録地域建造物資産100号に登録され現在では珍しい本格木造建造物です。

その建物を中心にさきほど紹介しました庭と客間奥にも昔ながらのかたちで井戸がある風流な庭があります。

池の水は天然地下水で敷地内にある三本の井戸より供給しています。水脈は地下10mの木曽の伏流水と言われ、四季を通じて水温は17℃で一定です。 私達の足元を優雅に泳ぐ錦鯉は、30匹以上います。 数寄屋造りの建物へ続く渡り廊下を歩く音に、錦鯉が水面より顔を上げ、近寄ってきます。

桐の間、菊松の間より池の錦鯉を眺める事ができます。


桐庭

庭のある部屋:桐

400年前からある井戸水を引いた池に、絢爛豪華な錦鯉の泳ぐ姿を見ることができ、都会の喧騒を忘れさせてくれます。


玄関の井戸・菊松階下庭

庭のある部屋:菊松

戦前から残された灯篭と純和風の中庭が、昭和の趣を感じさせてくれます。 井戸は400年前の清洲越えの時に庶民の生活用水の為に掘られた井戸と言われています。

絵画

「日本文化のテーマパーク」、つたもはロビーやお部屋に季節ごとの絵画を展示しております

総数200点以上の絵画を季節毎に展示しておりますので、訪れる度に新しい絵画に出逢える事でしょう。 ここではその一例をご紹介しています。

季節 正月
作者 横山操(よこやまみさお)
形態
題材 赤富士

季節
作者 奥村土牛(おくむらとぎゅう)
形態
題材

季節 初夏
作者 小野竹喬(おのちっきょう)
形態
題材 新緑

季節
作者 前田青邨(まえだせいそん)
形態
題材 桔梗

季節
作者 東山魁夷(ひがしやまかいい)
形態
題材 凍林暮色

お料理の楽しみ方

長い歴史で紡いできたもの

大正二年に『蔦茂旅館』が開業し、現在の料亭の元となっています。大正二年より脈々と伝統を受け継ぐ料理人が新たな感性を加えて丁寧に仕上げるお料理は、お料理と共に受け継がれたおもてなしの心が細部にまで行き渡っています。その技は会食の席を時には華やかに、時には趣のあるものにしてくれます。大切な接待や、記念すべき日を彩る場として申し分のない雰囲気を備えています。


おもてなしの料理

折々の『走り』、『旬』と『名残』の食材、それぞれの良さを生かして作り上げるお料理は、季節を巡ってまた出会えるとはいえ一期一会です。素材へのこだわりは新鮮で上質なものを吟味して仕入れ、丁寧に調理することでより際立ちます。変わったことはしませんが、手も抜きません。隅々まで行き届いた料理人の技は、シンプルだからこそ伝わります。その美しさはまさに格別で、季節を楽しむ器とともに五感に染み渡ります。


山口孝朋

『蔦茂』の味を守り、未来へと繋げる

100年続く老舗の九代目料理長。伝統の味を守るだけでなく、新たな食材や調理法も積極的に取り入れています。繊細な盛り付けは味だけではなく、五感でも楽しめます。特に席の趣旨を考慮して選ばれた器との調和は美しく、彩り豊かに季節を感じさせてくれます。美味しく召上っていただくために代々培われた技と、それを伝えていく中で日々生み出される新しい工夫。お料理と共に、板前としての心意気も受け継がれています。
 
中日新聞朝刊:2017年11月24日「この人」に紹介されました。
新店への意気込みを語る山口孝朋総料理長

ゲストに合わせた見事な接客

季節で美しく移りゆく庭園

住吉町通りに位置する店には遠方からも連日多くのお客様が訪れています。立地のよさもさることながら、たしかな信頼があるからこそ、長年愛され続けているのだと思います。席ごとに異なるお客様のご要望に合わせた、細やかな対応の絶妙な距離感が心地よく、「また来よう」と足を向けるのではないでしょうか。四季によって表情を変える中庭、絶えず流れる水音、ゆったりとした空間でいただくお料理は、特別な時間を過ごすにふさわしいものといえるでしょう。